「さあ…早く…その子を…放して…」

私は声を…。いや、体中を恐怖のあまりに震わせながら、兄狼へと歩みを進めた。

「もっと、こっちに来ないとダメだ。」

と、狼は不敵な笑みを見せながら、手招きする。

恐怖と、兄狼の行動に悪寒を感じながらも、子ヤギの為に震える足を前に出す私…。
今の私を支えているのは、いきなり来た私に、色々と精一杯のもてなしをしてくれた子ヤギを…傷つけるなんて絶対にできない!!という気持ちだけだ。