スターレディ物語

「はれちゃ~ん」


「空港まで我慢して?」


素は溜め息混じりに、ロングブーツを履いて、部屋を出た。


わたしも部屋を出ると鍵をきっちりかけて、リムジンバス乗り場に急ぐ。


すぐにバスは来たのだが、二人席は空いていなかったので、前後に座った。


グゥッと再び、素のお腹が鳴った。


素の隣に座る、優しそうな雰囲気の男性は、鞄の中から、重箱を取り出した。


「良かったら、どうぞ」


素に差し出す。


「でも……」


さすがの素直も、戸惑った。


「気にしないで下さい。わたしは大丈夫です」


素は重箱より、男性の話し方が気になった。


とても懐かしい。


父親と、同じイントネーション。


「さ、どうぞ」


スーツ姿の男性は、割り箸まで差し出した。