私は気付くと保健室のベットの上に寝ていた。


「ッ…たた…ここは…」

「あら?気がついたの?」


カーテンが開いたと思えば、そこには白衣を着た髪の長い女の先生がいた。

まだ若くて話しやすそうな人だ。


「あなた井野上君に運ばれてきたのよ」

「イノウエ…?……真先輩ですか?」

「そうそう、足怪我して運んできたみたいね」

「そうですか…」


そうだった。真先輩に私運んでもらって…。

お礼。お礼しなきゃ。お世話になったんだもん。


「ッ……」

「そうそう、病院今から行きましょう。骨折してるかもしれないから」

「…そうですか。」


立とうとした足が痛んだ。お礼。言わなくちゃ。

お礼。助けてもらったんだから。病院行く前に………・


「え?ちょっと、どこ行くの?」

「あ、すいませんお恥ずかしい話…朝からずぅっとトイレ行きたかったんです!!」

「そ、そう…大丈夫?一人で」

「大丈夫ですよ。心配ありがとうございます」


ニコッと笑うと、私はその場を後にして…お礼を…

なんてことはしなかった…。お礼は……お礼はメールで言おう。

とにかく学校を抜け出したかった。

病院なんてごめんだ。病院なんて………。

足を引きずりながら歩いていると、ふと真のことを思い出した。

人にあれほど親切にされたのは初めてだった。

ずっと一人で生きてきて……人とふれあうなんてしなかった。

したくもなかった。

迷惑掛けたくなかった。

けど……一人が寂しいって今日思った。

今思った。寂しい…一人はいやだ。

心が弱くなる。決心が揺らぐ。

一人でいよう……そう決めていた決心が。