「私家に忘れ物してきたッぽいです!先輩先行っててください」

「は?忘れ物?もうしょうがねーだろ。取りに行ってたら遅刻するぞ?」

「で、でも…大丈夫です!私足早いんで!」

「?そうか?ならお先に…ってんなわけあるかァァァァ!!」

「えぇっ!?」


優を見るとまだ寒いというのに汗をかいていた。

そして何より明らかに片方の足に体重を寄せている。


「樹から何回も落ちて、その時に足。痛めたんだろ。」


優はビクッと体を少し震わせた。

子供が悪戯をして、見つかったときのようだ


「ち、違うよ!忘れ物だもん。」


頬を少し膨らませるが、明らかに動揺してるだろ。


「じゃあ歩いてみ?ここまで。」

「うっ……で、できるよっ!」

「………。」

「ッ……!!」


負けじと必死に歩いているが、やはり無理そうだ。

というか…まさか本当に歩くとは…。どんだけ負けず嫌い?


「ッッ…!!ぐぅっ…」

「優!?」


優はうめき声をあげると、その場にしゃがみこんだ。

しまった…無理させすぎたか。


「むぅ…痛い…。うぅっ…」

「ごめん。俺が歩かせたから…足見せてみ?」

「だ…だめ!!マフラーだから!!」

「いや。意味わかんねーよ。…ってうっわァ…」


靴下を下げると、人間の足とは思えないほど膨れ上がっていた。

こりゃァ…やばいんじゃ。骨折してたら大変だし…。


「ほら。のれ。」

「え?」

「早く乗れ!学校遅刻しちまうだろーが!!!」

「は、はいいぃっ…」


俺が少し怒ったからなのか、優は潔く俺におぶられて学校に行くことになった。

優のぬくもりが背中に伝わる。

優は今何を思っているのだろうか。

そんなことを考えていると、背中から寝息が聞こえた。

振り向くと、そこには優の寝顔があり、少し微笑んだ。


「ったく…世話の焼ける奴。」


一人でそういうと、俺は学校に向かって黙々と歩き続けた。