夜風が乾いた髪をなでていく。
春とはいえ夜は少し肌寒いと思い白いコートを着てきたが、必要なかったようだ。
空には満月がテラテラと輝いていて、ネオンに負けないぐらいの光を発している。
春の満月は怪しく神秘的なイメージを施されている。
かすみがかった雲に隠れた時などなおのことだ。
「おい何ボケっとしてんだ。お迎えでも来たのか?」
ロマンチックな雰囲気に包まれていた私を、不躾にべリアルは振り返った。
横で歩いていた私が止まって空を見上げていたのが気に食わないらしい。
「来てないわよ!ちょ~とロマンチックなムードに浸ってただけなのにー」
「ロマンチック?はっそういうのはなかぐや姫みてぇな女に会っておまえにあるんじゃねえ」
………鼻で笑いやがったよ。

