風呂も無事におとなしく入ってくれ、私も続けて入った。
長風呂タイプらしく、随分と待たされた上にお湯はぬるい。これでは割に会うどころか公平ではない。男の残り湯につかっていてもときめかない恋愛漫画などないのではないか。ぶくぶくと口で息を吐いた。
とっとと上がり、お気に入りのパンダ柄のパジャマを着こみ私が風呂上がりの麦茶をあおっている時だった。
「ナギサ」
「あん?」
若干にらみつけながら私は訊き返した。
振り返ってみると、先ほどのコートではなく、真黒なタートルネックを絶妙なスタイルで調和させている。うっと麦茶が喉をするりと通り抜けていった。真黒な髪は滴り落ちる雨露のようにキラキラ水滴で反射している。

