ベルアルは恐る恐るスプーンを手にした。
そして亀並みの動作でソースがかかった卵をさらい、口に入れる。
むぐむぐと噛みしめるように味わい、そしてまたゆっくりスプーンを動かす。
まずいともうまいとも言わないべリアルに、私は訊いた。
「………まずかった?」
「………不味いことはねぇよ」
言いにくそうにべリアルは髪をかいた。
テレビでは金色のレタオードに身を包み、優雅に滑っている女性が三回転ジャンプを決めたところだ。
「………うめぇよ」
「は?」
「何度も言ってくれると思ったら大間違いだ」
そしてまた彼は手を動かす。

