『好きなんだ。葉木さんのこと』


あの誠実な瞳が頭から離れない。


この人は自分が知っている彼ではない、と悟ったのはそのまなざしの力強さからだった。


答えられないんだ。その思いに。


『………やっぱし出遅れたか』


樹君は、目にかかる前髪をうっとおしそうにかきあげた。なお一層、そのきつい目つきが強調された。


『とっととしとけばよかったよ。君がまだ僕を好きなうちに』


そうだね。でも私はそうは思わない。


貴方と付き合ってたら彼に出会えなかったから。