「私も帰るか………」 とくにすることもないし、教室で居残り勉強をするほど勉強熱心でもない。 帰ってお菓子でも作ろう。 教科書の重みで肩が潰れそうになりつつ、私も月緋の後を追おうとした。 「葉木さん」 だが呼びかけられたので、後ろを振り返る。 優しげな表情、凛とした目つき、薄笑いを浮かべている。 「ちょっといいかな?」 断る言葉を思い浮かばなかった。