つかヘッドフォンしてたのによくノックが聞こえたな。 耳当てから漏れて私の耳にまで届いてくる音楽は、今はやりのアーティストの声だった。 無駄にカッコよさ気にはずし、「なんだよ?」と不機嫌な声音で言う。 だが、私の話し声も負けていない。 「あんた、ちょっと顔貸せ」 トイレこいや!発言をされたベリアルはやや目を細めた。 だが彼の焦った時の癖である、こめかみから流れ落ちてきた一筋の汗を、私は見逃さなかった。