トーストが焼ける前にと顔を洗い、髪もきれいにセットした。


リビングからはテレビの音にまぎれかちゃかちゃと朝餉を準備する音が聞こえる。


なんだか新鮮だ、と思った。


だいぶ前から一人暮らしをしているので、誰かがこの家にいるという空気を味わったことは近頃は全くなかった。


びしょぬれになった顔をタオルで拭く。鏡を見ると微笑している自分がいた。はっきり言うと自分のにやけ顔は気持ち悪いものだ。


そしてなぜほほ笑まれなければいけないのか、と自分を叱咤した。


あの男は幸せじゃない。破壊とストレスを運んでくる虫だ。


まだ二日目だが、そこら辺を重々承知していた。