「ちょっとナギサ。顔をあげなさい」
どっかのご婦人のような口調で月緋がしゃべりかけてきたので、仕方なしに隣に目を移す。
「私を見るんじゃなくてあの乳臭いおこちゃまに向けなさい。これから惨敗する足軽の顔も知りたいでしょうよ」
勝負事になると、武将になり替わる月緋に苦笑いを送ったら、審判のホイッスルの音が甲高く体育館に鳴り響いた。
ジャンプボールの要領で、背の高い男子がボールをこちらへこぼしてくれる。
それを取ろうと半越しになった男子から奪い取り、私の傍からいつの間にか最前線に移動している月緋は、天使のような笑みで振りかぶった。

