『………おぅ。すっきりしたか聡志』


幾分か気まずそうに兄貴は頬を掻きながらやってきた。


ガクが目を怒らせ、立ち上がろうとするのを手で押さえこみ、誠を込めた瞳で兄貴を見上げる。


『………俺は聡志じゃありません』


腑に落ちない顔になった兄貴を仰ぎみた。


『これからは自分自身にけじめをつけるために、ソウと呼んでください。兄貴!』


名を完全に廃棄した自分を、どこか誇らしく思えてくるのはおかしいのだろうか。