「勝負?ああ勝負にすらなりませんでしたよ」
惨敗、といっていいほどの負け方だった。ソウ、になってから初めての負けに激しく狼狽した。
兄貴が涼しい顔してコンビニに入って行こうとするのを「待てよっ!」強くひきとめた。
『………なんでそんなに必死なんだよおまえ』
その瞳には先ほどの苛立ちはなく、怖いほど静かな色を宿していた。
『俺は負けねえ………!ソウは負けねぇんだ………!』
自分自身を否定してしまいそうだったから。名前を変えても親に捨てられたことを恨みに持っている薄汚い坊主だってことを認めてしまいそうで。

