「母親は律義に俺の名前を付けて俺を捨てました。聡志(そうじ)。いつも聡い志であれって意味らしいんですが、俺はこの名前が死ぬほど嫌いでした」 なぜ母親が自分の名前を付けて捨てたのか。 ただの気まぐれで考えたかもしれないこの名前をどうして好きになれと言うのか。 「ガクも一緒だったようです。学人。学ぶ人って書いてがくとです」 ただしあいつは俺とは違った。自分の名に誇りすら持っていた。 「俺には分かりませんでした。なんで自分を捨てた親にそこまで愛着が持てることが」