無邪気に理由を明確に説明して、ベリアルは素早く立ち上がった。
そのまま私のバットを奪い取り、バッターボックスに走り寄った。バッターだった部員は朱色に染まり、あたふたと笑顔で何か言ってくるベリアルを見上げた。
やがて部員は躊躇するように顔をゆがめ、下を向いてごにょごにょと何かをつぶやいた。否定しようとしているらしいが、初対面の人間に強く拒否できないのがふつうである。
そんな部員の肩に手を置き、彼が何かを話しかけると、更に哀れな彼女の顔はまだら顔になってしまった。
すごすごとベリアルと交代した彼女に話しかけてみたが、まるで淡麗な夢を見ているような眼差しでベンチへ戻って行ってしまった。
薬でもつかったんだろうか?と疑惑が私の頭の中に広がった。

