その時、心地よい金属音が鼓膜を震わせた。
ハッとなってグランドへ眼を移すと、山口千秋がバットを振った後のポーズで固まっていた。その眼は上へ固定されている。
審判役の子が、「ふぁーるふぁーる」と大声で叫んでいるのでホームラン確実のボールは、惜しくも横にそれたようだ。
ちっと千秋が舌打ちをした。そして気を取り直したように再び構えてピッチャーを睨みつけた。
「おっあの女すげぇな。腕力半端ねぇぞ。ゴリラみてぇな顔してんのか?………んだ普通の顔じゃねぇかつまんねぇ」
珍しくべリアルが絶賛(ときどき中傷)した。

