「あらご機嫌ようブラッハーさん」 数100メートルを全力で走ってきたのに息切れ一つもしていない月緋が微笑む。 「おっおう………」 それに対し、べリアルは口ごもりながら返答する。さすがのべリアルも月緋には頭が上がらないようだ。 「どうかなされましたか?」 「べっ別になんにもねぇよ」 そうですか、と月緋は薄く笑う。 べリアルはその笑顔に肩をこわばらせる。彼女の微笑みはたいてい相手を威嚇するときに使うと学習したからだろう。