風が少しおさまって、やがて雨の音だけが優しく夜を包んでいた。


フッと灯った電気に反応して、私と陽サマは同時に天井を見上げる。




「良かった。電気が戻りました」




陽サマは黙ったまま、ずっと私の泣き止むのを待っていた。
途中で声をかけたって、子供には無駄だって……思ったのかな。





私を椅子に座らせると、陽サマも隣の丸椅子に座って。

広げたままだった筆記用具を片付け、丁寧に鞄の中へ仕舞って行く。




なんとも気まずい雰囲気に、私は片付いた机の上を見つめながら小さく言った。



「最後の日なのにごめんなさい……」




困らせたり謝ったり……私は一体何をやってきたんだろう。





静かになった隣の陽サマを見上げる




「手を出してください」




相変わらず落ち着いてる陽サマ。

でも私のことは
まっすぐ見てくれていた。




手の平に置かれた、赤いお守り。




「僕がいなくなっても、ちゃんと勉強は続けてください。そして受験、頑張ってくださいね」





そうやって、いつも後には優しくするんだから。




どれだけ私を、夢中にさせたら気がすむんだろう。




「……ありがとうございます」






プルルルルル…………


部屋にある電話の子機が、グリーンのランプを光らせながら高い音を響かせた。