「…………」
お互い何も言わずに、なんかあげてもらったリビングには沈黙が続く。
しーん、とした空気が妙に不気味だ。
な、何か言わなければ…。
「私…」
「お前、謝ったよな?」
「へ?」
謝った?
…車の事かな?
「は、はい」
「お前、何したんだ?」
「…ぇ…」
気づいてらっしゃられない!?
確かに、傷は小さいけど結構目立ちそうな所だったような?
気づいてないなら、黙っていようかな。
「…なんででしょうか?」
「あ?」
へへ、と笑うと思いっきり睨まれた私。
まさに蛇に睨まれた蛙!
「す、すみません!」
どうしよ、どうしよ、どうしよ!!
正直に言ったら、もしかして殺される?
でも、小さな傷だし…いや、この人は分からない。
殺されるまでは行かないかもだけど、半殺しかも。
あの場で私逃走しちゃったし、余計に罪は重い。
黙ってていよーにも、あの状況をなんと言えばいいものか…。
バレたらその時が怖いし、罪を隠しながら生きていかなくちゃならないなんて辛すぎるし。
「…おい!お前何考えてんだよ?」
「えーと……」
「なんでお前は俺の質問に答えない?」
「それは…」
ほんとに怖いよ。
この人絶対ヤクザだよ。
「聞いてんのか?」
「今、車に傷をつけた事を言うか言わないか考えてるんです!!」
もう本当に怖いよこの人。
なんでそんな目で睨んでくるの?
「今なんつった?」
「っ」
今までに聞いたことのない、まるで地獄から聞こえてきたような低い声に思わず身体が反応してしまった。
「お前今なんつった?」
「…はい?」
微妙に声が震えてくるのが分かる。
「だから、今お前なんていった?」
「…はい?」
「ちげーよ、その前だよ」
「その前…?」
私、何かいいましたっけ?
怯えながら記憶を手繰り寄せる。
「車を傷つけたって言ったか?」
「……え?」
「そう言ったよな?」
「な、なんで…」
なんで知ってるの!?
「その事を言うか言わないか考えてるって」
なんでその事まで!!
読心術!?
ってか、やっぱり知ってたんじゃ?
知ってて知らないふりして、私に真実を言わせようとしたんじゃ?
「すみませんでした!!!」