「よいしょと」
荷物を詰め込んだキャリーバックと鞄をもって立ち上がる。
気持ちは浮かないままだけど、ママの言っていた人の所に行かなければいけない。
このままここに一人で住むのもいいんじゃないかと思うけど、断るにしても、とりあえず会ってみなくちゃね。
もし、良い人だったらそこに住まわせてもらおう。
悪い人?だったら…断ろう。
まあ、住まわせてくれるような人なんだか悪い人ではないだろうけどね。
「よし、行くか。」
いってきますと、誰もいない我が家に挨拶して家を出た。
*****
「ここ…?」
手渡された地図を持ち、指定された場所に向かう。
着いたのは、男の人が住んでいるには少し可愛い外観の家だった。
カントリー調のいい雰囲気の家は、なんだか可愛らしい家。
ちょっとだけ、興味がわいてきた。
ここにはどんな人が住んでいるだろう?
期待と不安が入り混じる気持ちの中、インターホンを押した。
『はい』
『あのー、私飯田と申しまして…今日から…』
ブチッ
え?切られた?
意味分かんないし!
家を間違えてるわけじゃないよね?
すると、ガチャと音がしてドアが開いた。
あ、良かった…。
「あの!私…」
ドアから出てきた人に声をかける。
「私……え?」
その人の顔は、どこか見覚えのある顔で……、
頭の中の過去の記憶を引き寄せていく。
………。
「…ま、まさか…」
「あ?」
「……あぁーっ!!」
思わず人差し指を向けてしまった。
だって、だってその人は……。
私の怒りの籠もった石ころが当たった車の持ち主だったから。