莉桜との通話を切って、ドキドキしている胸を押さえる。



目の前にあるカフェ〈sunny's〉を見つめる。



まさか、ここを経営している人の家族に彼がいるなんて。



そんな事実を知って、そして彼の名前を聞いただけで、すごく胸が鳴る。



私は道に迷って、遅刻しそうな事を忘れ、しばらく意識がぼーっとしていた。





******



「飯田ー!」



ふと、大きな声で呼ばれて我にかえる。



すると、目の前から誰かが自転車を漕いでこちらに向かってくるのが見えた。



「え?」



吃驚して、その人の姿をよく見てみる。



「飯田、大丈夫か?」
「……た、多島くん!?」



自転車に乗った人は、私の目の前で止まった。



そして私の鼓動は、更に加速して、体温も急上昇していく。



自転車を漕いでいた人は、高校のクラスメートであり、莉桜が見つけてくれた〈sunny's〉を経営している家族の一人である。



そして、私の片思いの人でもある多島陽翔(たじまはると)くんだった。