急いで学校に行く準備をする。



この家からだったら、今までと同じ高校に通える距離だとママも言ってたから、学校は変わらない。



いつもと同じ制服を着て部屋を出ると、ばったりしっかり服を着た井崎さんに出会った。



「あ、学校いってきます」



井崎さんにそういうと、階段を駆け下り、そのまま家を飛び出した。



…が、



「…どっち行けばいいの?」



勢い良く飛び出したのはいいものの、来たことのない町。
当然の事ながら迷ってしまった。



「…最悪……もう遅刻だよ…」



泣きそうになるのを抑えて、その場にしゃがみ込む。



井崎さんに電話しようとも、電話番号なんて聞いていないから出来ない。



戻ろうにも、来た道すらもあやふや。



完璧に迷子だ。



そうだ。
ある事を思い出して、携帯を取り出す。



もしかしたら、友達か同級生でこの辺に住んでる人がいるかもしれない。



友達に電話して、クラスの子達に聞いてもらおう。



アドレス帳を開いて、親友でもある莉桜(りお)にリダイヤルを合わせる。



『あ、美月?あんた今どこ?早くしないと遅刻だよ』
「…莉桜ー、迷った…」
『は?』



莉桜の呆れたような声が聞こえる。



莉桜とは小学からの腐れ縁。
お互いに信頼しあえる一番の親友。



そんな莉桜に助けを求める。



「理由は後で説明するから、ちょっと助けて」
『はいはい。んで?』
「…あのね、今…」



近くにあるカフェの名前を出して、このカフェのある場所を知っている人がいないか、クラスに聞いてと頼む。



莉桜は、クラスのみんなにカフェの〔sunny's〕という名前を出して聞いてくれた。



『美月!いたよ、それも〔sunny's〕の経営している家の人』
「ほんと!?誰?」





莉桜から告げられた名前に、胸がトクンと音をたてた。