君と一つ屋根の下






例のあの私が傷つけた車の助手席に乗せられて、どこかに連れていかれる私。



なんか、この車を乗るのって私にとってはちょっと居心地が悪い。



「お前、なんか嫌いなもんある?」



ふと、井崎さんに話しかけられて井崎さんを見る。



「い、いえ!特には!」



運転中の井崎さんに向かって、きっと見えてないはずだが、顔の前で手をぶんぶんと振る。



一応、私の嫌いなものを聞いてくれた井崎さんはそれからただ無言で車を運転していた。



運転している井崎さんを見る。
顔はちょー美形だし、寝癖なんて一つもない黒髪。
ちらっと見えるピアスも何気なく着こなしてる服もお洒落で。



男として落ち度はなさそうに見えて…。
性格がね。



優しいのかよく分からない。
だって、なんか私が言った事に全然返答してくれないし、常に顔が怖いから。



私嫌われているのかな?
それとも、今日で初対面だからまだ心を開いてくれないだけ?



「着いた。降りろ。」



いざ、話してくれたとしても素っ気ないし命令口調だし。



少なくとも一緒に暮らすのに、名前以外の情報はほとんど知らない。



まだまだ井崎さんは謎だらけだ。



「降りないのか。」
「っ!お、降ります!」



慌ててシートルベを外して、車から降りる。



着いた場所は、なんだかこぢんまりとしている、『Glitter』という名前のお店。



もちろん初めてだし、見たこともない。



いそいそと、店内に入っていく井崎さんを追いかけて私も中に入っていく。



そこは、カウンターしかないお店だったけど、夜も近い時間なのに暖かい雰囲気のお店だった。



カウンターが半円を描くように設置されていて、案外広々としている。



井崎さんは常連なのか、そのまま一番奥のカウンターに席につく。



私もその隣に座らせてもらう事にした。