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■ しあわせが怖いのは、











再生ボタンは押したくなかったよ。









朝。
珍しく始業より早く学校に着き、玲央が自転車置き場から帰ってくるのを生徒玄関で待つ。
いつもは生徒がいなくなったころに登校するので、生徒が玄関に入っていくのをあたしはなんだか新鮮な気持ちで見てた。


「え…羽田野さん?!」


横から名前を呼ばれ、あたしはそちらに目をやる。
そこにはサッカー部の…確か結構女子に人気なやつがいた。
あたしの記憶が正しければ、新キャプテンだったはず。
でも、誰かは知ってるけど、名前までは知らなくて。


「…」


なんとなく見つめてみた。
すると、向こうは慌てた様子で、


「あ、えと、同じ学年の市橋です…」


自己紹介してきた。
だんだん声のボリュームが下がっていくのが面白くて少し笑うと、市橋君は顔を赤くした。


「おはよ。」


喉に笑いを押し込みながら、挨拶しておいた。



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