「うん。いいよ」

 俺は頷くと、ナツはほっとした表情になった。


「それじゃあ、今日は餃子ね。他の材料も買わないと」


 一気に張り切り出したナツは、やっぱり新妻みたいだった。



「じゃあ……もういるものないかな……」


 食材を入れていっぱいになったカゴの中身を見て、ナツは買い忘れがないか確認してる。


「あ、旬。歯ブラシとか買わないと。うちにはピンクとかしか予備の分ないから…」


「もう買ってるよ。待ち合わせの前に、コンビニ寄ったから」


「えっ、準備いいね」


「だろ~?」


 そう言われたけど、コンビニには歯ブラシを買いに行ったわけじゃなく、他のものを買う予定で行った。

 そしたら、偶然歯ブラシが目についたから買っただけだ。


「あ、そうだ。ナツ、酒買おう!」


 大事なものを忘れてた。


 今日はパーティーだから、パーッとやらないと。

 俺は酒売り場を見つけ、カゴを持ったまま向かった。


「ちょっ……旬! 待って!」

 ナツは俺の腕を掴んで引っ張った。


「未成年が堂々とお酒のコーナーに行かない!」

 少し強めの口調で注意するように、ナツは言った。


「何だよ~。未成年だから酒はだめって? 固いこと言うなよぉ」


 いや、普通にダメだけどな。(酒は二十歳になってから!)


「そうじゃなくて! 旬、今制服でしょ! 一人で勝手に行かないの!」


 怒っているようで、まるで小さい子供に叱るみたいな口調が可愛い。(それが俺に向けられてるのはちょっと気になるけど)

 本当に、ナツは色んな表情するなぁ。


「ほら、行くよ」

 ナツは、俺の腕を引っ張ったまま、酒のコーナーへ行った。


 これって、腕組んでるみたいでちょっといい感じじゃ……


 て、思ったけど、ナツがビールをカゴに入れる時に、その腕は自然と離れてしまった。