今日は、高校卒業よりも、クラスの打ち上げなんかよりも、大事な用がある。

 それは、ナツの家に、初泊まりをするということ!



 5日前、ナツと電話をしてた時……


「あのさ、ナツ……」

 俺は意を決してナツに切り出した。


「何?」


「あの…次の金曜日、俺、卒業式なんだ」


「あ、そっか。まだ式は終わってなかったのよね」


「うん……それで、その日、さ……会える?」

 ガラにもなく、めちゃくちゃ緊張した。


「うん。大丈夫。…あ、でもいいの?高校最後なんだし、友達とかと遊んだりはしないの?」

 俺の緊張をよそに、ナツはそんな気遣いをしてくれる。


「いや……それは特に、ないんだけど……」

 まだ知らないけど、俺はいっぱいいっぱいになりながらそう言った。


「その、もしナツがよければなんだけど……」

 この先の言葉が一番緊張する。でも、言うって決めたから、言わないと……


「泊まりに行ってもいい?ナツんちに……」

 言った……! ついに言った!


 俺とナツは、付き合い始めて、まだ一度も……してない。キスすらしてない。


 いや正確に言えば、付き合うことになってすぐ、俺が嬉しくてキスしたけど、それは何か一方的だったし、何か違うっていうか……そもそも、俺らは付き合う前にヤっちゃったわけだから、そこから順番がおかしくなってるわけだし……


 だから、次にナツとセックスするときは、ちゃんとナツが俺のことを好きになってくれてから。そう決めて我慢していた。