「ビールおかわり! あと焼酎も持ってきて!」

 彼女はまた酒ばっかりをカウンターに向かって注文している。


 彼女の前には、明らかにさっきまでより大量の空きグラスやビンが置かれて、彼女の両隣の席まで広がっていた。


 流石にもうヤバそうな気がする。
 そう思って、俺は彼女に近付いた。


「…グラスお下げしまーす」

 いくらなんでもいきなり注意ができなくて、とりあえずそう言いながら彼女を盗み見る。


 彼女は、グラスに日本酒を注ぎ、それを一気に飲み干した。


 見てみると、本当につまみも料理もなく、ただ酒だけを胃に入れているようだった。


「お客さん…ちょっと飲みすぎじゃないですか?」

 見かねて俺は控えめにそう言った。


 すると、彼女は俺の方を向いて、


「何。客に文句つける気!?」

 そう言って睨んだ。


 俺は一瞬後悔した。


「何よ。一人で飲んで淋しい女って思ったんでしょ」


 うわー……絡まれた。


「え…いや、そんなことは……」

 客の手前、俺はそう言うしかない。


「思ったんでしょ! 正直に言いなさいよ!」

 彼女はそう言って俺を解放しようとはしない。


『正直に言いなさい』って……


「まあ…少しだけ……」


 そりゃ、一人で飲むのが好きそうな人じゃないし……淋しそうって言われればそうっぽいし……

 そう思って俺は頷いた。


 その次の瞬間、俺は彼女に腕を掴まれた。


「ちょっと座って!」

 そう言われ何故か無理矢理隣に座らせられた。