「また……また行こうな!今度、ちゃんと埋め合わせするから!」

 旬君は今日一番の笑顔になって、そう言った。


「うん」

 あたしもつられて笑って、頷いた。


 頷いたのは勢いとか、こう言うしかないからじゃなくて、確かにあたしの意思だった。


「それじゃ、終わったらまた電話するな」


「うん。待ってる。……旬君、バイト頑張ってね」

 そういうことも、自然と言えた。


「あ」

 旬君は何かを思い出したように声に出した。


「ナツ。俺のこと、次からは旬って呼んで」


「えっ……」

 何の脈絡もなく言われて、あたしの心臓は跳ね上がった。


「呼んでみて」

 旬君は、にっこりと笑っている。


「いっ今!?」


「うん。今」

 笑顔を崩さずに旬君は頷いた。

 そんな笑顔で言われても……


「……………………し」

 呼んでみようと思っても、それが精一杯だった。

 どんどん顔が熱くなるのを感じる。


「……やっぱり今は無理!」

 恥ずかしくて下を向いた。


 何で、名前を呼び捨てにするぐらいで恥ずかしがってるんだろう……そんな自分が尚更恥ずかしかった。


「可愛いから許す♪」

 旬君はいきなりそう言った。


「なっ何言ってるのっ……」

 あたしは、自分でも分かるぐらいに目が泳いで、狼狽えてしまった。

 旬君はそんなあたしを見て笑ってる。