明日、何着て行けばいいんだろ。


 あたしは、ベッドの上にクローゼットの中の服を広げて悩んだ。


 パンツかスカートだったら、絶対スカートよね。あ、先週買ったやつにしよう。トップも何枚か買ったやつで合わせて……後はブーツ出しとかないと。


 よし!

 悩みに悩んで完成した服を見て、あたしは一人で頷いた。



 ……て、何気合い入っちゃってるのよ、あたし!?


 自分でも驚くほど完璧にしているのに、あたしは愕然とした。


 こんな、デートじゃあるまいし……いや、デートらしいけど……





 旬君にコーポまで送って貰った日……


 部屋に着いてから、化粧を落として、丁度一息ついた時、鞄の中で携帯が鳴った。


 鞄から出して見てみると、電話で、着信は『沖田旬』。

 ここで初めて彼の名前を漢字で知った。


 そう言えば、電話するって言われてたんだっけ。思い出しながらあたしは電話に出た。


「…はい」


「あ、ナツー? 俺、旬。家着いた?」

 出るなり、電話の向こうの声はハイテンションだった。


「もうとっくに着いてるよ。だって三階なんてすぐじゃない」

 ちょっとおバカな発言に、あたしは思わず吹き出してしまった。


「あ、そっか。へへっ。俺は今帰ってきたの」

 旬君も、笑ってそう言った。


「そう……」


 今着いたということは……旬君の家はそんなに遠くないということか。

 そんな風に考えながら、あたしは向こうの言葉を待った。


 電話するって言われても、昨日の今日の出会いであたし達には話すような話題がない。少なくとも、あたしにはない。


「なぁ、ナツ。今度の土曜、ヒマ?」

 唐突に、旬君が言った。


「え……土曜? ……特に予定はないけど」

 あたしはそのままの予定を言った。


「じゃ、どっか行こ! ナツとデートしたい」


「え」


 デート…? デート!?