「……そっか」

 ミキはただそれだけ呟いた。


 電話越しにでも、気まずい雰囲気が伝わってくる。


「それで……旬はどうするの?」

 深刻な様子でミキは聞いてくる。


 といっても、実はそう気づいたのは、後になってからのことだ。

 この時の俺は、世界一のバカだったから、とても脳天気に、言葉を発してしまっていた。


「まぁ、とりあえず専門(学校)行くかなー。別にそっちでも興味あることできるし、資格も取れるし」


「……後期試験は受けないの?」


「そんなん無理に決まってんじゃん! 後期だったら倍率がハンパなく上がるし。やっぱ、ハナから俺が大学受験なんて無理だったんだよ」


 そう言って、俺は笑い飛ばした。

 このことも、後になって本当にバカなことをしたって思い知る。


「ミキとは……学校離れちゃうけど、それでも会えないわけじゃないんだし、それよりもミキが一番行きたかったとこに受かってよかったよ」


「何それ……旬、勝手すぎ」

 ミキの声の様子が、いつもと違った。


「え?」


「旬は……大学落ちて当たり前だよ。勉強してなかったんだから」

 こんな風に、ミキに厳しく言われたのは、初めてだった。


「旬は元々大学希望じゃなかったもんね。大学受けて落ちても、専門学校行けばいいって言ってたし。初めからそうやって安全な道を決めて、必死に頑張ったりしなかったんだよね」

 ため息混じりに、そう言われた。


「え……でもそれはミキと一緒の大学行きたかったから……」


「本当に?それなら何で勉強しなかったの? それどころか、教習所行ったりバイト増やしたりしてたよね。普通あり得ないよ。受験生なのに」


 返せる言葉はなかった。全部、ミキの言う通りだ。


「私……旬が私と同じ大学行きたいって言ってくれたの、本当に嬉しかった。わざわざ、進路変えてまで私と一緒の大学行きたいって言ってくれて……でも、結局、旬は口ばっかりだよ……」

 最後の方は、涙声に聞こえた。


「もう別れよ……私……これから旬と今まで通り付き合える自信ない」


 そうやって、突然別れの言葉切り出され……俺達は終わった。