その財布も、俺でも知ってるようなブランド物のものだった。


 俺は思わず自分のと見比べる。

 俺のは、三年ぐらい使い古してる、当然のようにノーブランドのもの。確か、三千円ぐらいだったと思う。


 全然違うじゃん。


 ……もしかして、俺ってナツより大分レベル低い?

 ただでさえ、ナツより年下なのに……


 ちょっと俺、専門学校とか行ってる場合じゃないんじゃ……


 働かねえと!

 漠然とそう思った。


 ナツより稼ぐとか……それは出来なくてもせめてナツに釣り合うようになんねえと……


「ねぇ、旬君」


「何!?」

 ナツが俺を呼んでくれるというだけで、俺はすぐさま反応する。

 ナツはちょっと目を丸くしながら、


「旬君は、春から大学生?」

 そう言った。


「ううん。働く」

 俺は即答する。ついさっき決めたばっかのことだけど。


「一応受験はしてたんだけど、全部落ちたからさ。浪人とかしてたら金かかるし」

 俺はそうナツに言っておく。


 本当の理由なんて、こっぱずかしくて言えないし。


「そっかぁ……」

 ナツは俺の言ったことに納得したように頷いた。


 あ、俺達、普通に会話できてんじゃん。

 ナツの方から結構話ふってきてくれるし……しかも俺がらみのことだし?


 全っ然心配ないじゃん。むしろ、絶好調なくらいだし♪


「あ……旬君」


 早速きた! 再びきた! ナツの方から話題くれた!


「なになに?」

 俺はまたもや嬉しくて速攻で返事をする。


「あの…変なこと聞くけど……お昼に、あたし電話したじゃない? あたしのケータイに。その時、あたし友達のケータイからかけたんだけど……何であたしだって分かったの?」