「えっ?」

 ナツミさんは、元々はっきりしてる目を、更に大きく見開いていた。


「順番逆になったけど…でもそのおかげで惚れたっていうか。だから俺と付き合って」


 『惚れた』とか、めったに口に出したりしないから、ちょっと変な感じだった。

 でも、俺の気持ちは、その言葉通りのもので、こう言うのが一番しっくりくる。


「何言って……」

 ナツミさんは固まっていた。

 そりゃ確かに、きっとナツミさんにとっては、こんな状況で、初対面同然の男にいきなり告られても、困るだけだと思う。


 それでも、ナツミさんに俺の気持ちをちゃんと伝えたかった。軽い気持ちじゃなくて、真剣なんだって、分かって欲しかった。


「俺と付き合って下さい! お願いします」

 俺は、きちんと正座して、ナツミさんに頭を下げた。

 俺なりに考えた、誠意の込め方……ナツミさんに伝わって欲しいという、そんな気持ちだった。


「ちょっ……やめてっ。顔上げて……」

 ナツミさんの言葉にも、俺はそのままでいた。


「やだ。ナツミさんがいいって言うまでこのままでいる」


 後で思ったことだけど、これじゃあ誠意を表すっていうより、ただの迷惑行為だったかも……

 その時は、そんなことを考える余裕なんてなくて、必死だっただけだけど。


「そんなこと言われても……ねぇ、とりあえず一回顔上げて?」

 何を言われて、肩を揺すられたりしても、俺は頭を上げなかった。

 俺が待ってるのは、『いい』っていう言葉だけ。


 『いい』っていう……


「――ねぇ、もういいから」


 俺はすぐさま反応して、頭を上げた。


「いいの?」


 本当に、ナツミさんと付き合えるの……?


 ナツミさんが、俺の彼女……?


「やったーーー!!」

 どうしようもないくらい嬉しくて、俺はナツミさんに抱きついた。勢い余って、倒れ込んでしまったけど、気にしない♪


「きゃっ! やだ…そうじゃなくて……っん!」

 ナツミさんが何か言っているのも、俺には聞こえてなくて、俺は夢中でナツミさんにキスをした。