ナツがカップに入ったココアを持ってきて、俺の前に置いてくれた。


「あ、ありがと、ナツ」

 俺が笑ってナツに言うと、ナツも微笑んで俺のそばに座った。


 それを見ながら俺はココアを一口飲んだ。温かさと甘さが、俺の体の中もじわりと染み渡っていく感じがした。


 よし……!


「ナツ。これ……」

 俺はポケットからナツへのプレゼントを取り出して、こたつの上に置いた。


「何? これ……」

 ナツはそれを見て首を傾げている。


「開けてみて」

 ナツに対してこんな台詞を言ったのは初めてだった。ちょっと照れる。


 ナツは袋を丁寧に開けて、手の上に中身を出した。


「旬……これって……」

 ナツはまた驚いた顔をして俺を見た。


「うん。この前、俺のせいで折っちゃったから……本当は来月に渡そうと思ってたんだけど、その……色々、ナツに嫌な思いもさせてるから、そのお詫びっていうか、さ。あっ、でも別にこれでチャラにして貰おうとか、そういうことじゃないから! ……何ての? 俺なりの誠意っていうか……」

 言いたいことがうまくまとまらない。言ってて自分でも何なのか分からなくなってきた。


「同じバイトの人に聞いたり、雑誌借りたりしてさ、人気あるらしいのにしたんだ。色とか、ナツに合いそうなの選んだんだけど……」

 そう言ってみても恥ずかしい。プレゼントするってこんな恥ずかしいことなんだ。何か色々とむず痒い。


「でも、口紅って高いんだなー。俺、びっくりしたよ。女の人って大変なんだなって改めて思った」

 それを誤魔化そうとして俺はそう言った。


 こんな場面で言うことじゃないかな?