「旬、こたつ入ってて」

 ナツは部屋に入ってエアコンをつけてこたつの電源を入れて、コートを脱ぎながら俺に言った。


「うん」


 部屋に入っただけでずいぶん温かく感じた。俺は言われた通りにすぐにこたつに入った。



「旬、ココアでいい?」

 台所からナツが聞いてきた。


「うん。ありがと、ナツ」

 俺はナツの方を向いて答える。ココアという甘くて温かい響きに、顔は自然と笑顔になるのが分かる。


 あったけー……


 だんだん温かくなるこたつが気持ちいい。俺はすっかり和んでいた。


 て、だめじゃん! 何和んでんだよ、俺!


 ナツが優しいからうっかり忘れそうになってた。

 俺はナツに謝らないといけないんだ。


 ナツのこの様子だと、もう気にしてないのかなとも思う。何も言ってないけど、俺のことを許してくれたのかなとも思う。


 でも、俺はまだちゃんと謝ってない。許してくれるナツに甘えてたらダメだ。


 俺はこたつから出て、ナツの方を向いて正座した。


「ナツ……ごめんな…」

 俺はナツの背中に声をかけた。


「え……?」

 ナツはこっちに振り向く。目を丸くして、驚いた顔をしていた。


 俺は緊張しながら口を開いた。


「俺……本当、今までナツのことちゃんと考えてなかったっていうか……いや、ナツのことは本当に大好きだし、すっげー大事に思ってるよ! ……でも、知らないうちにナツに甘えてたのは、確かだと思う……。ナツがどう思うかとかは、やっぱり考えられてなかった……」


 自分で言って、情けなくなって俺は下を向いた。


「これじゃあ、俺、ナツの彼氏って言えないよな…」

 本当にそうだ。

 俺、ナツの彼氏として、ナツに何してたっていうんだろ。


 でも……