「ぶぇっくし!」

 さっきから、くしゃみが出始めた。


 今日は寒いな。

 俺は手をこすりあわせて、ダウンのファスナーを上まで上げて、俺は小さく丸まっていた。


 ナツはまだまだ帰ってこない。


 本当にどうしたんだろう……


 何かあったからなのかな?


 あ、もしかして、俺が送ったメール見て、俺に会いたくないって思ったとか?ずっと待ってるとか送ったから、ウザかったとか? ……有りえるかもしれない。


 今日は帰ってこないのかな?


 まさか、他の男の人のところに行ってたり……


 嫌だ! それだけは嫌だ!


「ふぇっぶしっ!」


 嫌な考えが浮かんで、それはくしゃみと同時に吹っ飛んでいく。


 ……大丈夫。ナツはそんなことしない。大丈夫。


 俺は、去年ナツがデートで選んでくれたダウンの腕を握りしめた。


「ぶぇっぷしっ!」

 またくしゃみが出た。


 そうだ。ナツが帰ってきても、ナツとちゃんと話して、許してもらえるまで、ヘラヘラしないようにしないと。ちゃんと、真剣な顔しとかないと……



 その時だった。


「……旬」

 俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。


 小さかったけど……この声は……


 俺は声の方を向いた。


 そこには、大好きな人が、一番会いたかった人が……ナツがいた。