ピンポーン……


 ナツの部屋のインターホンを鳴らしても、何の反応もなかった。


 まだ帰ってないみたいだ。もうすぐ帰ってくるのかな?


 俺はドアにもたれかかって、ナツを待つことにした。




 それから暫くしても、ナツが帰ってくる気配はなかった。


 寒い……

 俺は冷たくなってしまった手をすりあわせた。足が疲れてきたからそこに座りこんだ。


 さすがに遅いな……


 もしかして帰る途中でなんかあったとか……?


 どうしよう……! ナツにもしものことがあったら……俺……



『あたし…不安だったんだからっ』




 ふとナツが言ったことを思い出した。


 あ……そうか……

 ナツもあの時、こんな気持ちだったのかな?連絡しなかった俺を、こんな気持ちで待ってくれてたのかな?


 ……不安に思ってくれてた。ナツが、俺のことを。



 こんな時にこんなこと思ってる場合じゃないけど……でも、嬉しい。


 初めて、ナツに言われた。俺のことに対して、不安だったとか、心配してたとか……



『これじゃあ、あたしばっかりが旬のこと好きなだけみたい』



 俺のことを好きだってことも。


 初めてそう言われたのにこれって、いいわけじゃないけどさ……


 俺は携帯を取り出して、ナツにメールを打った。


『俺、ナツが帰ってくるまでずっと待ってるよ』



 ナツはあの日、ずっと待ってたんだ。だから、今日は俺がナツのことを待とう。


 ナツが来るまで、ずっと……