「こちらです」

 店員のお姉さんは棚の前に立って教えてくれた。そこには、お目当てのものが並んでいる。


「お色が、全部で十二種類ありますが、どれになさいますか?」


 十二種類……そんなにあるのか。


「えーっと……どれがいいとかあるんですかね?」

 なるちゃんに雑誌を見せてもらってた時と同じで俺には全く分からない。


「そうですねぇ……どれを使うかはお客様のお好みですし……彼女さんへのプレゼントですか?」


「はい。まあ……」

 改めて言われると、ちょっと照れ臭かった。


「ピンク系とオレンジ、ベージュは女性に人気ですが……その中から選んでみますか?」


「あ、はい」


 俺は言われた通りにすることにした。


 店員のお姉さんが見せてくれた色は五色でその中でもピンクだけで三つあった。濃い色と、薄い色と、ラメっぽい色だ。


 そういえば、ナツが持ってたのは、ピンクだったはずだ。ナツはやっぱり、その色が一番似合うと思う。


「……じゃあ、これにします」


 俺はナツが持っていたのと一番似ている色を選んで、店員のお姉さんに言った。


「はい。包装はいかがなさいましょうか。プレゼント用でよろしいですか?」


「はい。それでお願いします」


「かしこまりました。少々お待ち下さい」




 ポケットの中にプレゼント用の袋に入れられた口紅を、俺はダウンのポケットにいれた。

 そして、携帯を取り出した。


 今、五時三十三分。


 多分、ナツの仕事は終わってるはずだ。


 俺はナツにメールを打った。


『今からナツの家に行くよ』


 そして、そのメールの通りに、俺はナツの所へと向かった。