「……普通、それが先じゃない?」


「え……?」

 ナツがいきなり言ったことの意味が、俺には分からなかった。


「女の子と話す暇はあっても、あたしに連絡しようとは思わなかったの?」


「女の子……? あ、見てた?あれ、同じバイトの子だよ。一緒にとばっちり受けたんだ」

 多分ナツはなるちゃんのことを言っている。変に誤解されないために、俺はそう言った。


「ああいう子、旬の好きそうなタイプよね」


「えー? まぁ、顔は可愛いとは思うけど、別にタイプではないって」


 確かに、なるちゃんは可愛い。でも、おっぱいはパットだし……どっちにしろ、俺はそこだけを見てるわけじゃない。


「でも、バレンタインの……チョコか何か貰ってたじゃない?」


「貰ったけど…でもあれは義理だから貰っただけだよ。彼氏に作ったクッキーが余ったからって。皆にも配ってるし、あんまり形もよくないやつだけどって言ってたから貰ったんだ」

 もし、本命でくれてたんなら、俺は貰ったりなんかしない。本命のはナツからのしか欲しくないから。


 でも、ナツは何でいきなりこんなこと言うんだろう。


「あ、もしかしてナツ、ヤキモチ?」

 ピンときて、俺は言った。


「……別にそんなんじゃないから」

 ナツの反応はつれなかった。


 でも、このナツの反応は、きっとそうだ。


「ナツ、心配しなくても俺にはナツだけだって。ナツが居れば、俺は生きていけるから」

 俺はナツを安心させようと、笑いながら言った。勿論、この言葉に嘘はない。


 でも、こういう言い方したら、ナツはきっと照れるんだろうな。

 そう思っていた。


 でも、ナツの反応はなかった。そして、後ろに引っ張られるような感覚がした。


「ナツ?」

 急にナツが立ち止まった。俺はナツの方に振り返る。


「何ヘラヘラしてんの……?」

 呟くような声でナツが言った。