「もしもし、ナツ?」

 着信音が鳴るか鳴らないかで俺は電話に出た。


「うん。……相変わらず出るの早いわね。今何してたの?」


「ナツの電話待ってた」

 俺はそのまんまを答えた。ナツの声が聞けただけで、すっごく嬉しい。


「そう……」


 でも、なんとなく、違和感があった。


「ナツ、何かあった?」

 気になって、俺はナツに聞いた。


「え……何で?」

 今の答え方も、ちょっと戸惑った感じがした気がする。


「んー……何か声が元気ない。いつもと違う。気のせい?」


 全体的にそんな感じがする。いつもは、もっと明るいと思う。


「ううん。何もないよ。ちょっと友達と飲みすぎたからかな」


「えっ……ナツ飲んだの?大丈夫?」

 今までと違う意味で心配になって、俺は聞いた。


「どうして?」


「だってナツ、酔ったら荒れるじゃん」

 うん、一年前はすごかった。


「なっ……荒れないわよ! あの時は特別だったの!」

 ナツはムキになった様子で言った。電話の向こうでは、唇を尖らせて、ちょっとむくれた可愛い顔になっているはずだ。


「へへっ。そっか」

 想像して、俺は笑った。


「……ねぇ、旬。……旬は、何であたしなんかと付き合ってるの?」

 いきなりナツがそんなことを言ってきた。


 え、何で……?


「何でって……そこにナツがいるから?」

 思ったことを、まんま言ったら、こんな言葉になった。どっかできいたな、こんな台詞。


「……」

 ナツは黙ってしまった。


「何か違う?」


「うん」


「え~……つうか、何でいきなり?」


 ナツがこんなこと聞くなんて珍しい。