「おはよー。沖田君」


 今日は十二時からカフェの方でのバイトだ。ちょっと早めにきて控え室にいると、声をかけられた。


「あ……なるちゃん。おはよ」


 声をかけてきたのは、今日同じシフトのなるちゃん(本名・鳴海美奈子ちゃん。俺と同い年)だった。

 なるちゃんは、小さくて、可愛くて、バイト仲間の中で人気がある。でも、俺は知っている。一見Dカップのそのおっぱいは、パットでできているということを……

 俺には服の上からでもそれが本物か偽物か(それか寄せて上げてできたものか)がわかる。これはちょっとした特技だ。



「どうしたの? 元気なくない?」

 なるちゃんが俺の正面の椅子に座り、首を傾げて聞いてくる。

「……うん。ちょっと……」


 あ、なるちゃんに相談してみようかな。なるちゃんなら真剣に考えてくれそう。(大川先輩と違って)


「なぁ、なるちゃん。ちょっと相談なんだけど……」


 俺はなるちゃんに今朝あったことを簡単に話した。



「……そっかぁ……それで元気ないんだ。沖田君、彼女さんのこと大好きだもんね」

 なるちゃんは頷きながら聞いてくれた。(やっぱり大川先輩と違って)


「それで、どうしたら許してくれると思う?なるちゃんなら、どうされたら許そうと思う?」


 なるちゃんには彼氏がいる。だからそう聞いたら参考になるかと思ってきいた。


「……うーん。あたしなら……謝られたんなら別にもういいけどなぁ」

 腕を組みながらなるちゃんは言った。


「まぁ、物に因るけど、口紅ぐらいなら……よっぽど大事にしてたとか、高価なものじゃないなら別にいいかなぁ。それに、謝られてるのに怒るのって結構気が引けるし……」


「……そういうもんなの?」

 でも、ナツは結構怒る。いや、可愛い怒り方だけど……。


 あ、でも、ナツが怒るのって、俺がふざけた時だよな。俺は遊んでるつもりだからちゃんと謝ったりはしないし……

 それになんかで謝った時はだいたい『いいよ』って言ってくれるし……

 引越しの時にバカやったのも、かなり謝って許してくれたんだよな。


 なんだ。特に難しく考える必要ないのか?