「で、何があってそんなため息ついてんだよ」


 ようやく俺の頬を離した先輩が言った。


「いや……その、彼女に会いたくて……」

 俺はまたため息をついた。


「……は!? お前何言ってんの? つい一昨日デレデレしながら彼女が家に泊まりに来るとかどうとか言ってたばっかりだろ?」

 先輩は目を丸くして言った。


「そうですけどぉ……」


「何だよ。結局彼女来なかったのか?」


「来ましたよ。それはちゃんと来ました。いつものようにちゃんとラブラブでした」


「……いちいちウザいこと言うな、鬱陶しい。……それで何でそうなってんだよ」


「何でって……特に理由はありませんけど……」


 本当にどうしたのか……

 一昨日会ったはずなのに、なぜか俺はもうナツ切れ状態だ。


 その前なんか二週間も会えてなかったはずなのに、今回はたった二日だ。


 なんか燃費が悪いみたいだ。


「そんなにしょっちゅう会いたいもんか?」

 意外なことを先輩は言った。


「当たり前っすよ! ホントなら毎日でも一緒に居たいぐらいなんですから!」


「ふーん。俺はそういうの無理だけどな。相手にもよるけど、絶対しんどくなるし」


「俺は会えない方が無理です……」


「……俺がもし女だったら絶っ対お前とは合わないな。今も合ってるとは思わねえけど」


「俺もそう思います。……はぁ……」

 俺は再びため息をついてしまった。


 本当に今日は気分が乗らない。


「……んなため息ばっかつくんだったら彼女に会えばいいじゃねえかよ」

 先輩の方が呆れたため息をついて言った。


「……いいんすかね?」


「お前の彼女のことなんて俺が知るかよ。自分できけ」


 そりゃそうだ。


 ナツにはメールで連絡がつく。会えるかどうかなんて、それで聞けばすぐに分かる。


 するだけでもしてみようかな……もしダメならダメで諦めよう。


 そう思いながら、俺はナツにメールを送った。