本当に情けない。


 ナツを困らせて、ナツに呆れられて……


 俺って、ナツにとって、何なんだろう……



「ナツ。俺ってナツの彼氏だよな?」

 たまらず俺はそう言っていた。


「何言ってんの? そうじゃないの?」

 ナツは更に呆れた口調になっていた。


「だって……何か違うじゃん。メシとか、いっつもナツが当たり前のように払うし」


 俺が言うと、ナツは目を丸くしていた。


「確かに、俺、金ないけどさ。さっきみたいに俺が出すって言っても、断って、ナツが払っちゃうし。……それに、デートの時、手も繋いでくんないし。今も俺側の手で鞄持ってるし」


「えっ……」


「ナツって、そういうの嫌いなの?」


 本当に格好悪い。


 男のくせにこんなこと気にして、彼女の前でグチグチ言って……


 これじゃあナツに呆れられてもしょうがないかもしれない。


「えっ……あ、別にそういうわけじゃ……今までそういう習慣なかったから……」

 今度のナツは呆れてる様子じゃなかった。

 少し戸惑った様子で、下を向いている。


「……嫌ってわけじゃない?」


 俺はナツの顔を覗こうとしてみる。

 よくは見えなかったけど、ナツの顔は赤いようだった。


「うん」

 ナツは小さく頷く。


「じゃ、繋ご?」

 そう手を出すと少し照れくさかった。


 改めてこう言って手を繋ごうとするのは、初めてだったかもしれない。


 少し間を置いて、ナツが、そっと手を出して、ぎこちなく俺の手を触って握った。


「へへっ」

 思わず俺は笑ってしまった。


 ナツの手の感触を確かめるように握り返して、指を絡めた。


 ほんの少し照れくさくて、でもそれ以上に嬉しかった。


 ナツを見て見ると、ナツも少し照れくさそうにはにかんでいた。



 手を繋いだだけで、ナツがすぐ近くにいるように感じた。今まで見ていたナツと違う角度でナツを見れるように感じた。


 そしてそのナツは、いつも以上に愛しかった。