せっかく二人きりなんだから、思いっきりナツを感じたい。

 この雰囲気だったら、このまま……


「だっ……ダメ!」


 ……このままって思ったのに、ナツはそう言って俺を突き放して後ずさりした。


「何で?」

 俺はナツを追いかける。

 ナツはさらに後ずさった。


「だって……まだ片付け終わってないし……」

 ナツは後ろを向いて、まだ片付いてないダンボール箱が三つ重ねて置いてあるのを見る。


「そんなのすぐ終わるからいいじゃん」


「ダメよ。先にやっちゃわないと……」


「先にヤっちゃわないと?」

 俺は笑った。勿論、やらしい意味を込めて。


「違う! もうっ…旬……きゃっ!?」

 一瞬隙ができたのを見逃さず、俺はナツに抱きついた。


「ナツ~」

 そのまま俺はナツを押し倒した。

「ちょっ……旬……イタッ!」


 倒れた瞬間にガツッと音がした。


 ナツが後ろにあったダンボールの一番下の箱の角に頭をぶつけてしまった。


「うわっ……ナツごめん!大丈夫!?」

 俺は慌てて体を起こしてナツを見下ろした。


「痛ぁ……もう! しゅ……」

 顔をしかめていたナツの目がぱっちりと見開かれた。


「危な……!」


「え……」


 ゴスッ……


 って感じで頭に衝撃がきた。何が起きたんだ……


「ちょっと……旬! 変に動かないでよ!」

 俺の下でナツが慌てている。


 あ、なるほど。ナツがぶつかった拍子に上の二つの箱が倒れてきたのか……

 多分それを今、俺の頭で支えてるんだろうな。


「ごめん。今直すから……」

 俺は首に力を入れ、頭と手を使って押し返した。


「もう! 旬が変なことするから」

 俺の下でナツが怒ってる。


 こんな状況でなんだけど……怒ってもナツは可愛いなぁ。