本を読んでいた母の様子が変わる。
そんな様子を見逃さないお姉ちゃんは、すぐに動けるように構えていた。
本をさっと閉じて鞄にしまった母。
「もしかしたら、次で降りるかもしれない」
お姉ちゃんはそう、私に耳打ちをしてきた。
「お茶の橋で?快速に乗り換えるのかな」
「まだわからないけど、降りる準備しとけよ。お前はとろいから」
「ごめんね、いっつもとろくて!」
私がそう言ったのと同時に、電車はお茶の橋の駅に滑り込んで行く。
母の様子からもちろん目はそらさずに。電車が駅に停車したのと同時に、母の足は電車の出入り口のほうへ動いた。
「やっぱりか。アキ、何度も言うけどはぐれるなよ!」
「わかってるわかってる」
私たちも母に近づきすぎないように数歩遅れて、電車を降りた。
