小心者の私に、そんなたいそれた作戦が実行できるのか。
疑問を持っても仕方ない。やって見てナンボである。
そんな私の一大決心にも気付かない先生は、赤ペンで丸付けをしながら何やら代名詞の説明らしきものをしている。
先生には悪いが、今の私はそんなものを聞いている余裕などなかったのだ。
「重要なところはよくできてるね。ここは説明してなかったからできなくてヨシ・・・大して入試にも出ないんだけど、念のために紙に書いとくか」
そう言って新たなルーズリーフに手をかけた先生に、私は思い切って聞いた。
恋する乙女、恋のためなら何だってするのだ。
「そういえば先生って、加藤何先生っていうんですか」
「あぁ、俺の名前?」
よし、先生は何も気にしていない。大丈夫だ、不審がってない。
平然と答えた先生に、私は内心祝福のガッツポーズだ。
あとは愛しの王子の名前を、この耳で聞くのを待つばかりだ。
