「こ」「ん」「ち」「わ」
この4文字が私にとってもたらす意味は、限りなく大きい。
普通の人には何ら変わらない挨拶に聞こえるかもしれない。
けれど私にとってそれは愛であり、華やかさであり、ときめきであり、麗しさであり、大地に等しいのだ。
今日も先生のその4文字だけで泥酔状態の私は、無論先生の目を見つめるなど到底できやしない。
「・・・どうも」
「よしよし、それじゃ今日は英語だね」
脳内ばかりが肥大生長を起こした私の行為は、もはや重度の小心者以外の何物でもなかった。
妄想恋愛には、行動が消極的になりがちだと言う副作用があるのかもしれない。
そんな私の小さな挨拶にも、先生はほほ笑みかけてくれるのだ。
こんな王子さまは、他を探したってなかなかいるわけがない。
