しばらくの沈黙が、私たちを包んだ。
私が黙ったまま泣きだして、どれだけの時間が、今ここで過ぎたのだろう。
ポケットからハンカチを出した私は、最後の涙をぬぐった。
「ごめんね、泣いちゃって。でも、もうだいじょうぶだから」
思う存分涙を出し切った私は、隣にいてくれたジローに笑って見せた。
なぜだか決まりの悪そうな顔をするジローに、私は話した。
「さっきね、加藤先生に言ったんだ。先生のおかげで私は、明るくなれたって。先生を好きになれたおかげで、私は変われましたって。だから、ありがとうって。自分の気持ちを言ったんだ」
「・・・それで？先生困らせたりしてないだろうな」
「うん・・・「春川さんは、自分を困らせるような子じゃないってわかってるよ」って言ってた」
「・・・それならよかったな」
ジローは深くうなずいたけど、私と目を合わせようとしない。
「もう会えないけど・・・先生のおかげでこんなに変われたから、これからはまた新しく頑張ろうって思った。そうすればきっと先生も嬉しいよねえ」
ジローはそんな私の想いを、黙って聞いていた。
