まさかさすがに、「妄想してて声出ちゃいました」などと言えるわけもない。
私は小心者なのだ。その上やることが大胆などうしようもない奴なのだ。
などとこの時の私には言っていられる余裕もない。慌てふためく先生の顔を見上げることもできず、ただ
「すすすすす、すーみーまーせーん!すぐ戻ります、ほんとすみません!」
「ちょっと、本当に大丈夫か!?なんかあったのか!?」
「凛々しいです、先生」なんて暢気な妄想をしている間もなく。
さすがにその場にいてはならないと感じた私は、先生の顔を見ずに「すみません」だけを言うと、バタバタと駆け足でトイレに向かった。
