「おい」 ぼーっとしている私に「目を覚ませ」と言わんばかりに、誰かの低い声が聞こえる。 「ん?」と私は半目開きの顔でそちらを見る。 「誰?」 「俺だ、俺」 顔が見える状況でオレオレ詐欺とは、常習者に違いない。 そう思った私は半目開きだった目を見開いて、そちらをはっきりと見つめ返した。 「だから、誰よ!」 「北條だよ」 そこにはいかにも細身で長身な、あの時の浪人生がいたのだ。